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ヴァンケット動物病院

フィラリア予防について

フィラリア症とは、フィラリアの一種である犬糸状虫(Dirofilaria immitis)が原因となる寄生虫性の感染症です。犬糸状虫は、トウゴウヤブカ(Aedes togoi)などの蚊によって媒介されるため、蚊の活動する季節には予防の必要があります。イヌでは、犬糸状虫の成虫が主に右心系に寄生し、循環障害が起こります。また、ネコやフェレットなどにも感染することがわかっています。

フィラリア予防の方法

イベルメクチン、モキシデクチン、セラメクチンなどの製剤を月に1回投与します。剤型は、錠剤、チュアブル、滴下型などがあります。12ヶ月間効果の続く長期作用型の注射剤も存在します。

フィラリアの予防期間

HDU(Heartworm Development heat Unit)という概念を用いて算出することができます。HDUとは、フィラリアを媒介する蚊の体内でミクロフィラリアが感染幼虫に発育するのに必要な積算温度の単位です。1日HDUは以下の式で計算されます。

1日HDU = ((最高気温+最低気温)÷2)-14(結果が負になる場合は0とします)

1日HDUを加算していき、春は130を越えた時点が感染開始、同様に冬は最近30日間の合計が130を下回った時点で感染終了とします。予防期間は、感染開始後1ヶ月程度から感染終了後1ヶ月程度までです。 実際に計算してみると東京都23区近辺では、1997年~2014年までの17年間で一番早い感染開始日が5/5、一番遅い感染終了日が11/14、平均感染期間は5/14~11/4日です。このデータから考えると予防期間は6月中旬~12月上旬となります。

フィラリア予防薬について

フィラリア予防薬という薬は、実際は駆虫薬であり、感染を予防する薬ではありません。そのため、フィラリアの感染開始より遅れて投薬し、感染終了後しばらくしてから1度投薬する必要があります。イベルメクチンでは、L4の幼虫がターゲットのため、感染15~50日齢の幼虫に効果があります。ミルベマイシンでは、L3、L4、L5初期の幼虫がターゲットのため、感染15~60日の幼虫に効果があります。そのため、年の最初の予防は5月下旬~6月上旬に行い、最後の予防は11月下旬~12月上旬に行うのが望ましいと考えられます。
年の最初のフィラリア予防の前には、フィラリアの感染の有無を検査する必要があります。フィラリア予防薬は、要指示医薬品であり、投薬前には犬糸状虫感染の有無を集虫法、抗原検査法などにより検査することが定められています。当院では、顕微鏡を用いたミクロフィラリア検査と検査キットを用いた成虫抗原検査を併用しています。

近年のフィラリア予防について

近年、通年予防という考え方も一般的になってきています。2008年にアメリカの愛玩動物寄生虫学協議会(Companion Animal Parasite Council)が出したガイドラインでは、動物の環境や管理に注意を払い感染リスクを最小限に抑えると同時に、犬糸状虫、内部寄生虫、外部寄生虫の通年予防が推奨されています。

ネコネコのフィラリア症について

ネコのフィラリア症は、イヌと同様に犬糸状虫が原因となり、呼吸器症状(HARD、犬糸状虫随伴呼吸器疾患)、嘔吐、食欲不振、突然死などを起こすといわれています。また、確定診断が困難で、ミクロフィラリア検査や成虫抗原検査では検出できないことが多いため、抗体検査を行います。1997年の日本猫フィラリア予防研究会の報告では、日本における猫フィラリア抗体陽性率は、全国平均12.1%(30/248頭)、関東地方では6.1%でした。当院では、ネコのフィラリア予防もおすすめします。飲み薬が苦手な場合は、スポットタイプ(背中につけるタイプ)の薬剤があります。

フェレットフェレットのフィラリア症について

フェレットのフィラリア症は、犬糸状虫の感染により循環器障害を起こし突然死する場合もあります。フェレットは体格が小さいため、小数の寄生でも重篤な症状を呈します。予防薬は、錠剤を粉砕して与えるかスポットタイプを使用します。フェレットの場合、血液中のミクロフィラリアは感染フェレットの20~60%でしか確認できません。また、成虫抗原検査キットは、陽性反応を出すために2~3匹の成虫が必要ですが、ほとんどの感染フェレットでは1~2匹の感染しかみられないため、偽陰性結果が出てしまう可能性が高いです。そのため、診断は地域のフィラリア感染状況、臨床症状、超音波検査、血液検査などの所見から総合的に行います。フェレットに関しても月に1回の予防でほぼ100%フィラリア症を防ぐことができます。ただし、フェレット用に認可された薬剤はないため、適用外使用となります。

その他の動物のフィラリア症について

ミーアキャット(Suricata suricatta)やフェネック(Vulpes zerda)にも犬糸状虫が感染します。これらの動物においても、フィラリア予防の必要性があると考えられています。 予防に当たっては、犬猫用の薬剤を適応外使用することになります。